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「山田さんのエクセルシート問題」

皆様は、中期経営計画をどのように作成されてますか?

本社経営企画が、各事業部と戦略方針を共有しながら事業部別計画を作成し、最終的な連結事業計画を策定してゆくフレームワークがあるもの・・・と、社会人になるまでは考えていました。ところが、実際は会社ごとに事情が異なることがわかりました。


中期経営計画の属人性のレベル

  1. 非属人的な組織的フレームワークやシステムが整っている会社

  2. ある段階まではシステム化されるも、それ以降は属人的に作成している会社

  3. すべて属人的に作成している会社

中期経営計画のシステム化の分類

  • 財務会計は管理会計に優先的にシステム化されている

  • 財務会計は管理会計よりシステム化が劣後している

  • 事業部と本社は自動で連結会計されている

  • 事業部と本社は手動で連結会計されている

このように、事業計画の取りまとめは、財務会計と管理会計の狭間にある機能領域であり、その取りまとめ役の責として、未だに属人的にならざるを得ない状況にあることがわかります。そこで問題となるのが、中期計画の「山田さんのエクセルシート問題」です。


第一章:山田さんのエクセルシートって何?


私が見てきた企業のほとんどは、中小企業から上場企業まで、中期経営計画をエクセルシートで作成していました。その背景には、はるか昔に気概のある経理マンが作りこみ、大切に引き継がれてきた歴史がありました。しかし、事業別シートの原価構造、収益構造が時代の変化にそぐわなくなり、配賦数式がブラックボックス化されていたりと、まさに属人性の残骸のような存在になってしまいました。その経理マンを探そうにも、もう第一線を退いて本社にいなかったり、退職していることが多いのです。


このような状況を普遍化したのが「山田さんのエクセルシート問題」です。

  • 山田さんがいなくなってしまったら?

  • 山田さんの弟子になることが既得権益化してしまったら?

  • 山田さんのエクセルシートのマクロが難解で誰もわからず、更新できない状態だったら?

あなたの企業には「山田さんのエクセルシート」はありませんか?もし、あるならば、属人的な仕組みから脱却する対策が必要となるでしょう。



第二章:山田さんのエクセルシートは世襲制

皆様は、RPA導入に成功していますか?


RPAが普及してから5年以上経過し、成熟期に入った感があります。

しかし一方で、導入に失敗する事例もたくさんあります。


実はその一因が、「山田さんのエクセルシート問題」です。


RPAがとん挫に至るパターン

  • 取締役がRPAベンダーのセミナーに参加する

  • 製品デモを見て感動し、すぐにRPAプロジェクトを立ち上げる

  • オペレーション実務担当者でチームが編成されプロジェクト開始

  • ここで「山田さんのエクセルシート」問題発生!

  • モックアップ試作と改良を繰り返すも、既存作業の改善には至らず

  • 山田さんが作ったマクロ機能が、すでにRPAだったことに気づく

  • 「今のままでいいのでは・・」とオペレーターの心が離れ、RPAプロジェクトは自然消滅する

結局、RPAを導入しても「世襲制」という属人的オペレーションを実務から排斥するには、

大元の組織文化を変革しないとうまくいかないことがわかります。



第三章:属人性に頼ることの危険


「山田さんのエクセルシート問題」のポイントを8つにまとめました。

  1. オペレーション実務に、様々な属人的エクセルシートが存在している

  2. オペレーター独自のマクロ関数が実装されている

  3. 個人PCの“マイクロソフトアクセス”が使用され、事業部のERPとリンクしている

  4. 商品マスターは、隠語が使われており文書化されていない

  5. マクロ関数のロジック、計算式、前提条件など解釈や経緯が不明

  6. マクロ関数作成者とのコンタクトは困難

  7. 重要なノウハウとデータベースは、オペレーターの頭の中にある

  8. 属人性に頼るエクセルシートは、属人性を排斥できないように設計されている

皆様は、いくつ当てはまりましたか?

もし、4つ以上当てはまる場合は、クラウドで一から作り直した方が早いと言えます。

ただし、システム刷新の予算を取得するには、費用対効果を示す必要があります。


まとめ:古くて新しい「属人性問題」を解決するためは?

事業計画作成などのオペレーション実務における属人性排除は古くて新しいテーマです。

しかし、折しもデジタル革命&コロナ禍によってテレワークが一般的になり、「デジタルオペレーションスキル」という人的資本が付加価値源泉であることが認識されはじめました。

2015年から始まったSaaSブームは2002年にピークを迎え、高度なデジタルオペレーションノウハウを内製化させるために、DevOpsやCI/CDと言う概念で広がり始めています。


したがって、以下のようなシステム刷新のための予算獲得の理論構築が考えられます。


【問題提起】

  • 果たして、オペレーション実務は、単純作業であろうか?

  • オペレーターは、業務改善を日々行ってノウハウ蓄積しているのではないか?

  • そのノウハウをオペレーター自身のエクセルシートに表現しているのではないか?

  • そのノウハウはオペレーターに帰属するが、会社の人的資本として新たな収益源泉になるのではないか?

【問題解決策】

デジタル無形資産の価値評価を行い、無形資産たる人的資本として計上することで、システム刷新の費用以上の企業価値向上が見込めることを、定量的に示す。

具体的には、

  • DevOpsやCI/CDによるデジタルノウハウ内製化のBefore/Afterの生産性を比較する

  • デジタルノウハウ内製化のBefore/Afterの企業価値から、その単独価値を算出する

  • 人的資本としてバランスシートに計上し、新たな収益源泉として価値評価に加算する

今後、このような概念が浸透することによって、会計的にデジタル無形資産を収益源泉として取り込む傾向が予測されます。

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